〜社寺建築☆美の追求〜 大岡實の設計手法  大岡實建築研究所
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川崎大師平間寺薬師殿(神奈川県川崎市)
   (旧自動車交通安全祈祷殿)  
川崎大師平間寺では大本堂を始めとして不動堂や奉賛会事務局、中書院、本堂御水屋及び献香屋、三宝殿とその設計に携わってきたのだが、約10年後に自動車の祈祷殿の設計の依頼を受ける。その経緯について大岡實は次のように述べている。
「自動車の祈祷殿の設計の依頼があり、何か変わった建築をとのことであった。ちょうど私は、日本各地およびインドで仏舎利塔(釈迦の遺骨を納める施設)の設計のためインド建築を研究していたので、インド風の設計をした。
本堂などと全く違った様式で、全体としての違和感が心配されたが、寺域の南側で、本坊にさえぎられて本堂前の伽藍中心部からはほとんど見えないので、この形式に踏み切った。主としてヒンドウ教式の建築で砲弾状の高塔を三本建てた。(中略)インド風であり、日本では異色な建築であろう。」(川崎大師の諸建築/有鄰 昭和52年12月10日)
そして、その設計の意図については上棟式前のインタビューに答えて次のように述べている。
<塔のある寺院は、日本にないのではないでしょうか。また、あの三つの塔というのは、なにか意味が・・・>
「いちがいに、塔といっても、日本の五重塔などは、塔婆をかたどった建築物だといわれているのに反して、インドのブダガヤにある大塔、あれは、あの塔の下に、ご本尊のお釈迦さまがお祀りしてある厳然たる仏堂なんですね。それで、私は、はじめにすぐ、ブダガヤの大塔を頭にえがいたわけなんです。
ブダガヤのは、中央に高い塔が立っていて、四隅に一つずつ小さい塔があります。私も、あの形を採ろうかと思ったのですが、祈祷殿の奥行がそう広くないので、五つ全部は、とてもはいりません。
それで、大本堂に安置されている三像に思いあたって、三塔の形をとることにきめました。ビィルディングなんかですと実用的な面から、自然に形がきまってしまうものなんですけれども、こういうものは形をとらえることがむずかしい。そこに一番苦心するわけです。いま申しました三つの塔のバランス、高さの点でも、ちょっと高ければヒョロ長いものになりますし、低ければ、また、つぶれたような形になってしまう。その間のプロポーションが、こういう建築では、生命観といいますか、いちばんのきめ手になる中心をなすところで、そこだけでも、何回設計図を書きなおしたかしれません。その結果が、ご覧になればわかりますが、たいへんおちついた、ととのった塔の感じが出せたわけです。そのほか、全般的にいっても、平間寺さんにお願いしてつくっていただいた模型によって、中央の入口を拡げたり、正面の廂の出なんかも、だいぶ修正いたしました。」

<この祈祷殿の建築は、インド寺院風といってよろしいのでしょうか。>
「ええ、もう、純粋のインド様式といって差支えないと思います。
大体、あるまとまった様式をもつものは、まとめるときに、一つの雰囲気でまとめませんと、中途半端な、妙なものが出来上がってしまうものです。それに、コンクリート工事なので、構造も、副設計監督をしている技師の松浦弘二君と二人で、やり易いようにせっけいしたつもりです。」

(新自動車祈祷殿の構想/川崎大師だより 新・自動車交通安全祈祷殿 落慶記念臨時特別号/昭和45年12月15日)

正面立面図
断面図
側面立面図
妻飾り詳細図
法輪詳細図
ここに、何枚かの写真が残っている。
模型
原寸場において施主の方々と打ち合わせをする松浦弘二(中央)
工事中
その屋根にて施主及び施工者の方々と松浦弘二(左から二人目)/大本堂の屋根が見える
工事概要等
 
年月 西歴 工事名 所在地 工事期間 助手 構造設計 施工 構造種別
昭和45 1970 川崎大師自動車交通安全祈祷殿 神奈川県川崎市川崎区大師町4-48 昭和44.08〜45.12 松浦弘二 松本曄 大林組 SRC造

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